「質の良い睡眠がどういうことか知りたい」
「睡眠の質が悪くなると、どうなるの?」
という方のためにお届けします。
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『質の良い睡眠』を一言で言うと
睡眠全体に占める、深い睡眠・浅い睡眠・レム睡眠・その他(寝付きまでの間、自覚がない中途覚醒)の割合が5:2:2:1の状態。
この状態を、心理学・精神医学の観点から『質の良い睡眠』と言います。
裏を返せば、この割合やサイクルが崩れた睡眠が『質の悪い睡眠』となります。
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『質の良い睡眠』の概要
学術的に、睡眠状態は脳波を測定することで正確に把握できることが知られています。
たとえば目が覚めている状態(覚醒状態)と眠っている状態(睡眠状態)では、発生する脳波の種類とその出現割合が異なります。
覚醒状態
β波:集中して仕事や勉強をしている状態で出現
α波:目は覚めていても、安静・リラックスしている状態で出現
睡眠状態
浅い睡眠 | Stage1:θ波 | ウトウトしている浅い睡眠の状態で出現 |
Stage2:睡眠紡錘波 | 本格的な睡眠状態で出現 | |
深い睡眠 | Stage3:δ波 | 深い睡眠の段階で出現(脳波全体に占める割合20%以上~50%未満) |
Stage4:δ波 | 深い睡眠の段階で出現(脳波全体に占める割合が50%以上) | |
レム睡眠 | 急速眼球運動(Rapid Eye Movement:REM)が発生し、一時的に睡眠が浅くなる |
私たちの睡眠は基本的に、Stage1→2→3→4→3→2→1→レム睡眠の順で1周期となっており、この1周期が約90分サイクルで繰り返されます。
心理学・精神医学の研究の結果、特に深い睡眠(Stage3や4)の段階では、副交感神経が優位となり、リラックスした休息状態となります。
逆にレム睡眠では脳の活動が活性化し、起きている時と同じくらい交感神経が活性化することが判明しています。
普通に考えると、深い睡眠(Stage3や4)の状態が長く、浅い睡眠(Stage1や2、レム睡眠)の状態が短ければ「ぐっすり眠れている」「質の良い睡眠」と思ってしまうかもしれません。
しかしレム睡眠は、新しい情報が入って来ない状態で脳の「メンテナンス」をしており、一時的に交感神経が活性化するものの、健康な睡眠において必要不可欠なものなのです。
また、深い睡眠(Stage3や4)が長いということは、それだけ日中の活動において疲労が蓄積している証拠であり、疲れ切っていることでもあります。
多くの方々の睡眠時の脳波を測定した結果、健康な方の睡眠状態は下記の割合で構成されます。
- 浅い睡眠(Stage1や2):約50%
- 深い睡眠(Stage3~4):約20%
- レム睡眠:約20%
- その他(就寝して実際に眠るまでの時間や自覚がないレベルでの中途覚醒):約10%
つまり、私たちの睡眠の半分は「浅い睡眠」であり、深い睡眠は健康な人でも全体の5分の1程度なのです。
そしてこの5:2:2:1の割合が、睡眠における標準であり、いわゆる『質の良い睡眠』といえます。
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睡眠の質の測定・評価方法
脳波計
前述した睡眠段階の正確な測定・評価は、脳波計がなければ実施できません。
医療機関における睡眠外来などでも、「睡眠ポリソムノグラフィ」と呼ばれる脳波計などの複数の測定機器を装着した状態で、各種バイタルデータ(生体情報)を計測します。
ただし、このような大がかりな測定は、そもそも睡眠障害や睡眠時無呼吸症候群などの診断・治療のためのものであり、日常生活における健康増進やヘルスケア・マネジメントに活用するには不向きです。
装置の大きさや価格もさることながら、医療機器の指定を受けていることが多いため、一般人の購入・使用が制限されており、基本的には医療機関以外での利用が難しいです。
ですが、最近では、脳波計以外でも睡眠の状態を可視化・数値化する技術が発展・普及しています。
これは、ウェアラブル・デバイスが普及したことと関係しています。
ウェアラブル・デバイス
ウェアラブル・デバイスには、ウォッチ型やリストバンド型、眼鏡型、心拍センサー型など様々なタイプがあります。
平成27年の総務省の発表によると、全世界で2億2,390万台、日本国内では1,310万台が使用され、国内の普及は2012年~2017年までの6年間で約240倍にまで広がっています。
▶︎平成27年版情報通信白書(総務省)
また、多機能な上に多くの機器の価格が1~数万円程度と安価なこと、労働安全衛生法の改正(ストレスチェック制度)も追い風となり、個人ユーザーに加えヘルスケア産業や企業の健康管理など利用者はさらに増えると推測されています。
▶︎ウェアラブルデバイスを用いた心拍変動解析の個別化医療への活用 血圧(24 9 648-654:住友和弘・長谷部直幸2017)
ウェアラブル・デバイスでは、心拍・脈拍などのバイタルデータが正確かつ手軽に測定できるものが多いです。
また、心臓が自律神経でコントロールされていることから、心拍を周波数レベルで解析することで、自律神経の状態も可視化・数値化することができるものもあります。
特に自律神経は、交感神経と副交感神経の2つで構成されており、心身のバランスを保つ重要な機能の1つです。
主に交感神経は興奮・ストレスと関連しており、副交感神経は休息や睡眠、リラックスと関係しています。
つまり、交感神経・副交感神経の状態を把握することができれば、日々のストレスや睡眠の質をモニタリングし、評価することができるわけです。
心理学・精神医学では、脳波計で脳波を測定しつつ、ウェアラブル・デバイスも同時に装着・測定し、脳波データと心拍から導出した自律神経データの関連性が研究されており、脳波と自律神経の変化はリンクすることが判明しています。
つまり簡易的ではあるものの、脳波を測定しなくても、心拍データ(自律神経データ)から、睡眠の質を把握することが可能なのです。
ただし脳波と比較すると、評価の正確さには多少難があります。
そこで心拍データ(自律神経データ)に加えて、姿勢データ(寝返りなど)や呼吸などのいくつかの指標を組み合わせて、脳波の正確さに近づけようとしているのです。
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睡眠が、仕事や勉強のパフォーマンスに及ぼす影響
人間の生理現象は、24時間周期(概日リズム:サーカディアンリズム)でパターン化されている
人間の身体は「概日リズム(サーカディアンリズム)」に沿って、脳波も自律神経もバランスがとられているため、朝になると自然に交感神経が活性化し、夜になると副交感神経が活性化するようになっています。
このメカニズムのおかげで、私たちは朝になると仕事や勉強をするモードに自然となり、夜になれば休息・睡眠へとスムーズに移行できるのです。
逆に言えば、私たち人間は、そもそも夜遅くまで勉強や仕事(残業)ができるような「身体の仕組み」を持ち合わせてはいないのです。
夜間の仕事や作業は、ヒューマンエラーや事故につながりやすい
また、いわゆる夜勤などのように、基本的に夜間に働くような仕事の場合も、様々な問題が発生しやすいことが明らかになっています。
夜勤なので、日中に睡眠をとり、夜に働く、という昼夜逆転のライフサイクルとなるわけですが、しっかりと日中に睡眠をとったとしても、人間の自然なリズムは「朝・昼に交感神経活性化」と「夕方から夜にかけて副交感神経活性化」は簡単には変わりません。
仕事中に効率が上がらなかったり、思わぬミスが発生したりします。
特に仕事中のミスであるヒューマンエラーは事故などにつながることも多いとされています。
以下、ヒューマンエラーが原因となって発生した事故と、その発生時刻に関する調査結果をまとめたものです。
▼ヒューマンエラーとその発生時刻
発生時刻 | ヒューマンエラーや事故の概要 |
午前0時~4時の間が最多 | アメリカにおける交通量の少ない郡部での単独自動車事故の発生件数 |
午前3時に最多 | ドイツにおける列車運転時の安全操作ミスを知らせる警報の発信回数 |
午前2時に最多 | スウェーデンにおけるガス会社の交代制勤務者の計数値の誤読 |
午前1時~2時 | チェルノブイリ原発事故 |
午前4時~6時 | スリーマイル島原発事故 |
午前1時35分に発生 | オークハーバーとの原子炉事故 |
午前4時14分に発生 | ランチョ・セコの原子炉事故 |
23時~午前1時30分 | インドの農薬工場の爆発事故 |
これらの時間帯は「概日リズム(サーカディアンリズム)」における睡眠のタイミングと一致しており、そもそも、これらの時間帯には仕事や作業などを実行するのが難しいのです。
また、表の中でも、原因が睡眠不足によるものであると結論付けられているのが、チェルノブイリ原発事故とスリーマイル島原発事故であるというのは有名な話です。
起床後13時間後から急激に作業能力が低下。17時間後なら、アルコールで酔っ払っている状態と同じ
睡眠不足や長時間残業が引き起こす問題は、原発事故などの大規模なものだけではなく、私たちの日常における仕事でも発生するのです。
通常、起床から13時間経過した段階までは、人間の作業能率は高い水準を維持するとされています。
つまり、朝の6時や7時に起床したとすれば、夜の19時から20時くらいまでは問題なく仕事をこなすことが可能であるということです。
しかし、13時間を越えると急激に作業能力が低下していき、17時間が経過した時点でアルコールを摂取し酔っ払っているのと同様の状態になります。
これは、朝の6時や7時に起床した場合、夜の11時や12時の段階において、もはや仕事が満足に遂行できない状態になってしまうということです。
■ケーススタディ:朝6時30時に起床、1時間くらいかけて通勤し、夜の23時30分くらいまで残業した場合
終電で1時間かけて自宅に帰ると夜24時30分ころ。
帰宅してすぐに眠ることができるわけではなく、着替え・食事・風呂(シャワー)などをしていれば、あっという間に深夜25時を過ぎてしまうでしょう。
仮に深夜25時30分にベッドに入ったとして、前述のように睡眠段階には順番があるので、すぐに深い睡眠(Stage3や4)には移行しません。
次の日も朝6時30分に起きなければならないとすると、睡眠時間は5時間弱であり、睡眠全体の約20%程度である深睡眠の割合も少なくなります。
また、約90分サイクルで睡眠段階は1周期するので、5時間弱の場合、3周期までしかできないということになります。
これらの観点からも、深夜まで続くような残業は効率も悪く、ミスも多発します。
相対的に睡眠時間が短くなることで、日中の眠気なども発生しやすくなり、結果として、勤務時間全般において、効率の低下とミスの発生が増えてしまいます。
最終的には、不眠障害などの睡眠関連の精神疾患の発症へとつながるケースもあります。
また、睡眠の問題は単に睡眠障害として発生するだけではなく、うつ病などの他の精神疾患やストレス性障害の症状として発生することも多く、睡眠不足の及ぼす悪影響は幅広いものなのです。
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睡眠の問題がもたらす経済的損失
日米ともに数兆円規模の経済的損失
睡眠が及ぼす影響については、健康への影響だけではなく、経済的な損失についても研究されています。
アメリカの調査結果によると、睡眠障害による経済的損失は年間500億ドル。
日本円にして5兆円を超える金額が失われているのです。
また、日本における睡眠不足がもたらす年間の経済的損失は2002年の時点で、1.5兆円から2兆円という試算が日本学術会議から報告されています。
さらに、睡眠不足が原因として引き起こされる交通事故に関する日本の調査では、年間の経済的損失は3兆5000億円であるという試算が発表されています。
プレゼンティーイズム(パフォーマンスが低下した状態での就業)につながれば、やはり数兆円規模の経済的損失
最近、産業場面において重要なキーワードとなっているのが、アブセンティーイズムとプレゼンティーイズムという概念です。
アブセンティーイズムとは「absence」、つまり欠勤のことであり、いわゆる冠婚葬祭を除いた、健康状態悪化・疾病による欠勤日数のことです。
プレゼンティーイズムとは、欠勤にまでは至らず、出勤してはいるものの、心身に不調がある状態で就業しているということであり、疾病就業と訳されることもあります。
これらは健康リスクが産業場面における経済的損失に結び付いているということを意味しており、厚生労働省や経済産業省も調査を実施しています。
調査の結果、日本においては、アブセンティーイズム(欠勤)よりも、プレゼンティーイズム(パフォーマンスが低下した状態での就業)の方が、はるかに経済的損失が大きいことが判明しています。
また割合としても、産業場面における健康リスクの約75%がプレゼンティーイズムで占められていることも明らかになっています。
プレゼンティーイズムによる経済的損失は、肩や腰の痛み、喘息などのアレルギーなどのフィジカルな要因によるものもありますが、メンタルによるものもあり、こちらの方がより大きな問題であるとされています。
調査の結果、メンタルヘルスに関する問題に起因するプレゼンティーイズムによって、日本では年間約4兆円の経済的損失が発生していることが分かっています。
▶︎渡辺洋一郎(2017) 精神科担当産業医としてストレスチェック制度への意見 産業ストレス研究 24 265-272
このメンタルヘルスに関する問題には、睡眠障害やそれに付随する精神面の問題、および不眠等による集中力の低下やミスの発生などが含まれています。
プレゼンティーイズムをより簡単に考えると、1人の従業員が100%のパフォーマンスを発揮して仕事をしている状態が「最も良い就業状態」とした場合、全社のパフォーマンスは一体、どれくらいになるのか、ということです。
多くの経営層や人事総務関連の部門は、従業員のパフォーマンスがおおよそ100%くらいの高いパフォーマンスで就業を継続している、という観点を持っています。
しかし、実際にはプレゼンティーイズムの影響で100%のパフォーマンスが発揮できている従業員は非常に少なく、調査の結果、業種を問わずほとんどの従業員が約60%程度のパフォーマンスで就業していることが判明しています。
これを単純に従業員数に換算すると、全従業員が100人の企業は実際には常時60人程度の労働力しかない状態で経営されているということになるわけです。
なぜ、プロジェクトの進捗が予想よりも遅いのか、なぜ、ミスが多発してしまうのか、そんな日々の業務で起きる問題の背景には、実はプレゼンティーイズムという「目には見えない損失」が関係しているのです。
そして、このプレゼンティーイズムと関連が深いのが睡眠なのです。
睡眠不足は仕事のパフォーマンスを低下させるという意味では、主な原因の1つといえます。
前述のような手軽に睡眠の質を測定・評価するウェアラブル・デバイスを活用して、自分の睡眠がどのような状態なのかを科学的に把握することが重要です。
その上で、同じくデバイスを活用して、どのようなアプローチで睡眠が改善したのかを把握することで、自分に合った最適な「質の良い睡眠のとり方」が分かるでしょう。
そして、質の良い睡眠は仕事のパフォーマンスを上げ、ひいてはみなさまが所属する企業の利益向上にもつながっていくと考えられます。
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