「リモートワークは、メンタルヘルスにどんな影響を与えるの?」
「コロナ禍のストレスの要因が知りたい」
という方のためにお届けします。
現在、新型コロナウィルスの感染拡大の影響により、業界・職種を問わず、リモートワークが増加しています。
また、いったんリモートワークを導入したことにより、新型コロナの影響が収束した後も、継続してリモートワークによる業務遂行を決定している企業・事業所もあります。
では、働き方の大きな変化であるリモートワークの導入は、私たちの心身の健康にどのような影響を及ぼすのでしょうか。
今回は、急速に広がりつつあるリモートワークについて、メンタルヘルスという観点から解説していきたいと思います。
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移動や姿勢変化という時間が減り、心身の健康に悪影響を及ぼす
実は、リモートワークの増加と長期化という働き方の変化は、私たちの気づかないところでメンタルへルスとも関係しています。
たとえばリモートワークが増えたことによって、移動や姿勢変化という時間が減り、それが心身の健康に悪影響を及ぼすことが判明しています。
研究の結果、通常のオフィスワークでも多い座位姿勢ですが、長時間の座位による行動(デスクワーク)は、うつ病の発症と関連が認められています。
小野寺氏らの研究では、1日の時間のうち、30分の座位行動を同時間から60分のウォーキング等に置き換えることだけでも、心理的ストレスは有意に低下することが報告されています。
普段の生活で、通勤を「気分転換」として捉えている人はほとんどいないのではないでしょうか?
しかし、通勤や帰宅時における家から駅までや、駅の中での移動などは、知らず知らずのうちに私たちのメンタル面の健康に良い影響を及ぼしていたということなのです。
逆に言えば、リモートワークが増えたことで1日30~60分程度の「歩く」という行動は、その必然性がなくなってしまったことによって顕著に減少し、ストレス低減のタイミングが失われてしまったということです。
さらには、オフィスワークでは営業先への移動や、昼食を食べるために社外に出る際の移動などもあり、この場合も座位から立位への姿勢変化と歩行を伴うわけですが、営業先ともリモート会議を行い、昼食も3密を避けるためにデリバリーで済ませるとなると、ますます歩く時間も頻度も減少してしまいます。
しかし、現状ではリモートワークを減らして、積極的に出勤・出社をすることも困難です。
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人間工学から考える適切なリモートワーク「20-20-20ルール」
「20-20-20ルール」とは、パソコンやタブレット、スマートフォンによる作業において「20分毎に20秒間の休憩を取り、20feet(約6m)以上、先を見る」というものです。
日本人間工学会という学術団体がオフィスワークに関連して、90年代後半からパソコンなどによるデスクワークのガイドラインを最新の研究知見に基づいて提案しているガイドラインです。
このガイドラインは何度もアップグレードを重ねており、2010年にはノートパソコンの利用率の拡大に合わせた対応を、そして2020年には新型コロナウィルスの影響によるリモートワークおよびタブレット・スマートフォン使用を念頭に置いたガイドラインを発行しています。
パソコンやタブレット、スマートフォンによる作業をする際の姿勢を「座位10分 + 立位5分」を繰り返すというのも心身の健康に効果的であるとされています。
また、「座位20分 + 歩行2分」というセットも同様に効果的であることも判明しています(榎原・松田 2020)。
人間工学的には、ほんのちょっとした姿勢変化や歩行を座位姿勢と織り交ぜていくだけで、疲労やストレスの影響を大きく低減できるという事実は、現状の働き方の変化において非常に重要であると考えられます。
リモートワークが増えている中で、このような誰でも簡単にでき、なおかつ科学的根拠に基づいた工夫を取り入れることは「変化への適応」という観点からも非常に良いと考えられます。
ご興味・ご関心のある方は、日本人間工学会のホームページを参照していただきながら、実践してみていただければと思います。
▶︎ 一般社団法人 日本人間工学会
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新型コロナ禍中の人々の不安・ストレスと抑鬱・孤独感の変化
最後に、2020年4月7日、7都道府県に緊急事態宣言が発令された前後に、3,170名を対象としたパネル調査・インターネット調査が実施されていますので、内容をご紹介いたします。
この調査によれば、新型コロナ禍の中で不安に感じることとして、全体の4.2%が「遠隔勤務(テレワーク、リモートワーク)の時間の増加」をあげ、2.0%の人が「遠隔勤務(テレワーク、リモートワーク)、オンライン学習の増加に伴う情報機器操作のスキル」をあげています。
不安に感じていること | 全体 | 男性 | 女性 |
収入の減少 | 40.4% | 41.7% | 39.2% |
自宅に長くいることによる運動不足 | 39.6% | 33.4% | 46.1% |
なんとなく不安 | 35.4% | 28.7% | 42.5% |
食料、成果必需品の入手 | 31.0% | 27.4% | 34.5% |
規則正しい生活習慣が損なわれること | 18.2% | 12.8% | 24.0% |
病院に通院できないことによる健康状態の悪化 | 11.7% | 9.9% | 13.6% |
子どもの学習時間の減少 | 10.7% | 8.1% | 13.4% |
学校再開後の生活 | 9.4% | 6.9% | 12.0% |
病院に通院できないことによる薬の入手 | 9.2% | 8.8% | 9.7% |
会えないことによる友人・知人・恋人との関係の悪化 | 8.4% | 6.6% | 10.3% |
自宅に長くいることによる情報不足 | 6.2% | 5.4% | 7.0% |
家族関係の悪化 | 6.0% | 4.2% | 7.9% |
遠隔勤務(テレワーク、リモートワーク)の時間の増加 | 4.2% | 4.8% | 3.5% |
ゲームの利用時間増加による健康への悪影響 | 3.7% | 2.6% | 4.9% |
遠隔勤務(テレワーク、リモートワーク)、オンライン学習の増加に伴う情報機器操作のスキル | 2.0% | 1.9% | 2.0% |
また、ストレスに感じることとして、全体の24.3%が「遠隔で仕事をすること」をあげ、さらに20.9%が「遠隔で学校や授業を受けること」を挙げています。
現在、ストレスに感じること | 回答比率 |
自由に外出できないこと(N=2,828) | 65.6% |
外食できないこと(N=2,608) | 52.1% |
楽しみにしているイベントなどが中止になっていること(N=2,245) | 70.0% |
離れて暮らす家族・恋人・パートナーに会えないこと(N=2,245) | 40.5% |
子どもを保育園・幼稚園・学校などに預けられないこと(N=1,061) | 34.9% |
野球や大相撲などのスポーツが延期・中止になっていること(N=2,293) | 30.0% |
会社に通勤できないこと(N=1,343) | 24.8% |
遠隔で仕事をすること(N=1,071) | 24.3% |
遠隔で学校や塾の授業を受けること(N=882) | 20.9% |
東京オリンピックが延期になったこと(N=2,308) | 19.5% |
これらの結果は、他の様々な因子と比較してリモートワークが不安やストレスのトップ要因ではありませんでした。
しかし、3月・4月の時点では、リモートワークの増加はあくまで一時的なものであると考えている人が多く、「ずっと続いたらどうしよう・・・」というような不安はまだそこまで強くはなかったと考えられます。
不安という感情は、将来・未来に対する感情です。
一方で、ストレスの方は将来・未来だけではなく「今、この瞬間」である現在の状況を強く反映します。
純粋な比較は困難ですが、リモートワークに対する不安よりも、リモートワークに関するストレスの方が約5~10倍程度、多くの人に影響を及ぼしていたと考えることもできます。
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