「ストレスの本来の意味を知りたい」
「ストレスが増えると、どうなるの?」
という方のためにお届けします。
『ストレス』を一言で言うと
『ストレス』とは、元々、物理学や工学の専門用語で「物体に力が加わった時に発生する歪み」のことを指します。
それが転じて、現在、私たちは身体と心の両方に影響を及ぼす何らかのできごとや状況、人などについて「ストレス」と表現することが多くなっています。
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心理学上の『ストレス』とは?
では、少し専門的に心理学やメンタルへルスの観点から見ると、『ストレス』とはどのようなものなのでしょうか。
『ストレス』に関して、最初に科学的な研究をした代表的な1人として、生理学者・心理学者のハンス・セリエがいます。
ストレスの原因「ストレッサー」の4分類
セリエはストレスの原因となる「ストレッサー」を下記4つに分類し、これらの様々な「ストレッサー」に対して、人間を含むすべての生物は適応しようと試み、安定した状態を保とうとすると考えました。
- 物理的ストレッサー
- 化学的ストレッサー
- 生物的ストレッサー
- 心理的ストレッサー
ストレスの原因「ストレッサー」の3段階
また、セリエは「ストレッサー」への反応には警告期、抵抗期、疲憊期という3段階があると述べています。
- 警告期:一時的に抵抗力が低下する段階
- 抵抗期:ストレッサーに対して身体が適応しようとして抵抗力が上がる段階
- 疲憊期:ストレッサーが長期間継続し、身体が限界に達して再び抵抗力が低下する段階
セリエは「ストレッサー」がどのようなものであっても、人間の生理的機能は警告期、抵抗期、疲憊期という順に段階を経て変化するとしており、これを「汎適応症候群」と呼びました。
「汎適応症候群」による影響
「汎適応症候群」そのものは病気ではありませんが、この状態が長期間続く(疲憊期が長期間継続する)と、身体の抵抗力が低下し続け、病気のリスクが高まり、様々な疾患が発症すると考えられます。
ストレス反応の結果が胃に強く影響した人は、胃潰瘍となる可能性があり、呼吸器系(肺など)に強く影響した人は、過換気症候群となる可能性があります。
『ストレス』と聞くと、どうしても悪いイメージが浮かびやすいですが、セリエも述べているように、本来、『ストレス』というのは「対処・適応をすることで安定を取り戻そうとする際に発生するモノ」です。
つまり、『ストレス』には「良い」も「悪い」もなく、どのくらいの程度の「強さ」なのかということが重要であると考えられます。
心理学における『ストレス』とは「身体的・精神的な安定に影響を与えるような出来事の総称」であり、『ストレス』の影響は筋肉、骨格、内臓、神経、血管などの身体に影響を及ぼすということは既にセリエが報告しています。
そして、後の様々な研究で『ストレス』は「心」にも影響を及ぼし、様々な精神疾患の原因にもなるということが明らかになっています。
うつ病や不安障害なども、『ストレス』の影響が脳や神経に出てしまい、安定を取り戻そうと心身が抵抗するも、長期の『ストレス』によって、脳や神経にダメージが出てしまうことが、精神疾患の一因なのです。
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『ストレス』を感じるまでの流れ
では、具体的に私たちはどのようにストレスを感じるのでしょうか?
私たちの心は基本的に「知覚」「認知」「感情」「行動」という順番を経て感じます。
知覚
「知覚」とは、できごとや事柄を見たり、聞いたりする段階です。
まずは、外界の情報を取りいれるというステップを踏まなければ、私たちの心は動き始めません。
認知
次いで「認知」という段階に移ります。
これは見聞きしたできごと・事柄について「自分にとって都合が良いコトなのか、悪いコトなのか」を判断・評価するという段階です。
たとえば、大音量でハードロックを聴くことが「好きだ」という判断・評価を持っている人は、それが「自分にとって都合が良い」という状態になるので、特にストレスを感じることはないでしょう。
しかし、同じ曲を聴いても「うるさい・嫌いだ」という判断・評価を持つ人は、その状況を「自分にとって都合が悪い」となるため、『ストレス』を感じてしまいます。
つまり、同じできごと・事柄を知覚しても、それをどう認知したのかによって、それが『ストレス』になるのか、ならないのかが変わってくるということなのです。
これをうまく利用して、精神疾患の治療・支援に役立てているのが「認知療法」や「認知行動療法」です。
特に「認知行動療法」はうつ病の治療・支援に効果的であることが科学的に証明されており、日本では、現在唯一、医療保険の対象となっているカウンセリング手法です。
なぜ、「認知行動療法」が効果的なのかというと、日々起きる様々な出来事に対する「考え方」や「捉え方」の部分である認知を変化させ、ストレスを軽減させることができるからです。
感情
『ストレス』において重要なのは実は私たちの考え方の根本である認知なのですが、その認知の影響を受けて発生するのが感情です。
認知の段階で「都合が良い」と判断・評価された出来事・事柄にはポジティブな感情が、逆に「都合が悪い」と判断・評価されたできごと・事柄にはネガティブな感情が発生します。
私たちが普段の生活で注目するのは、この感情の部分であることが多いです。
特にネガティブな感情は『ストレス』と直結してイメージされやすいものです。
しかし、実際には感情の手前の認知の段階で、出来事をどのように判断・評価したのかによって、感情は大きく左右されます。
さらには、認知次第では感情がそもそも発生しないということにもなり得るのです。
感情に振り回されずに、出来事や事柄に対して冷静な判断・評価をすることが、実は一番の『ストレス』対策なのです。
行動
そして、感情が発生した後に起こるのが行動です。
心理学において行動とは「〇〇をする」だけではなく「〇〇をしない」というのも含まれます。
たとえば、仕事が大変で『ストレス』を感じているとしましょう。この時点で仕事というできごとや事柄を知覚し、それが自分にとって都合が悪いという認知がされており、さらには緊張や不安、抑うつなどの感情も発生しているはずです。
その上で、たとえば「会社に行きたくないから休む」という行動が発生する可能性があります。
そして、この最後の行動の部分で「会社を休んだ」という自らの行動を知覚し、認知することで「休んでしまった自分を責める」ことで罪責感という感情を抱く可能性があります。
したがって、何らかの行動をすることで終わりなのではなく、そこからさらに派生する形で「知覚」「認知」「感情」と続いて行くこともあります。
このように「知覚」「認知」「感情」「行動」という一連の流れが私たちの心のメカニズムとしてあり、『ストレス』もこの過程の中で発生するものなのです。
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『ストレス』の原因調査。1位「配偶者の死」、7位「結婚」
私たちの生活は変化の連続であり、その変化に適応しようとすることもまた、日常茶飯事です。
つまり、私たちの生活は『ストレス』であふれていると言っても過言ではないのです。
では、どんなできごとが特に『ストレス』が高いのでしょうか。
心理学者のホームズとレイは、調査研究として多数の人にアンケートを実施し、『ストレス』を数値化するという試みをしています。
その結果、以下の表のようなデータが明らかになりました。
順位 | 生活上のできごと | ストレス度 | 順位 | 生活上のできごと | ストレス度 |
1 | 配偶者の死 | 100 | 23 | 子どもが家を離れる | 29 |
2 | 離婚 | 73 | 24 | 親戚とのトラブル | 29 |
3 | 別居 | 65 | 25 | 特別な業績 | 28 |
4 | 留置所の拘留 | 63 | 26 | 妻が仕事を始める、あるいは中止する | 26 |
5 | 親密な家族の死亡 | 63 | 27 | 学校が始まる | 26 |
6 | 自分の病気あるいは傷害 | 53 | 28 | 生活上の変化 | 25 |
7 | 結婚 | 50 | 29 | 習慣をあらためる | 24 |
8 | 失業 | 47 | 30 | 上司とのトラブル | 23 |
9 | 夫婦の和解 | 45 | 31 | 仕事上の条件が変わる | 20 |
10 | 退職 | 45 | 32 | 住居が変わること | 20 |
11 | 家族の一員が健康を害する | 44 | 33 | 学校が変わること | 20 |
12 | 妊娠 | 40 | 34 | レクリエーションの変化 | 19 |
13 | 性の問題 | 39 | 35 | 教会活動の変化 | 19 |
14 | 家族に新しいメンバーが加わる | 39 | 36 | 社会活動の変化 | 18 |
15 | 新しい仕事への再適応 | 39 | 37 | 1万ドル以上の抵当か借金 | 17 |
16 | 経済状態の変化 | 38 | 38 | 睡眠習慣の変化 | 16 |
17 | 親友の死亡 | 37 | 39 | 家族が団らんする回数の変化 | 15 |
18 | 異なった仕事への配置換え | 36 | 40 | 食習慣の変化 | 15 |
19 | 配偶者との論争の回数の変化 | 35 | 41 | 休暇 | 13 |
20 | 1万ドル以上の抵当か借金 | 31 | 42 | クリスマス | 12 |
21 | 担保物権の受戻し権の喪失 | 30 | 43 | ちょっとした違反行為 | 11 |
22 | 仕事上の責任の変化 | 29 |
最も『ストレス』が高い出来事は「配偶者の死」となっています。
これは誰しもがある程度、納得ができることかと思います。
しかし、7位に「結婚」がランクインしていることは意外と思われる方は多いかもしれません。
結婚は幸福な出来事・事柄ではありますが、生活が大きく変化する要因でもあります。
それまで一人暮らしだったのが、配偶者と同居を開始することになったり、結婚を機に退職や転職をする人もいるのではないでしょうか。
このような大きな変化は、たとえそれがポジティブなことであっても、その変化に上手く適応するための努力が必要になります。
そのため、結婚のようなポジティブなライフイベントも、『ストレス』要因となるわけです。
これは前述のように『ストレス』は「良い」「悪い」で考えるものではなく、どの程度の大きさの変化に対して、どれくらい頑張って適応しなければならないのかという視点から考えるべきものであることを示しているといえます。
また、表にあるようなライフイベントが持つ『ストレス』の程度が“自分の感覚”と異なると感じる人もいるかと思います。
また、死別や結婚・離婚などの人生における大きな出来事よりも、日々の瑣末なトラブルやイライラするような事柄であるデイリーハッスルズの方が『ストレス』値が高い傾向にあるという研究報告もあります。
これは、できごとをどのように認知するかによって、『ストレス』発生の有無や『ストレス』の程度が異なるということを示しているといえるでしょう。
まずは『ストレス』とは何か、という基本的なところに立ち返り、正しく理解するということが重要です。
科学的根拠に基づいた正しい理解こそが、最も身近で最も実行しやすい『ストレス』対策といえるでしょう。
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