はじめに:
近年、CBD(カンナビジオール)のみならず、欧米を中心に大麻(麻、カンナビス)の社会進出が拡大してきています。
一方で、大麻に含まれる成分の内、THC(テトラヒドロカンナビノール)は、常に議論や規制の対象にあります。
そんな中、この現代の大麻時代に盛り上がりを見せるのが「カンナビス・ソーシャル・クラブ(CANNABIS SOCIAL CLUB=大麻社交クラブ)」です。
それでは、大まかなカンナビス・ソーシャル・クラブの概要を捉えていきましょう。
カンナビス・ソーシャル・クラブとは?
カンナビス・ソーシャル・クラブ (略称:CSC) とは、大麻の個人使用のために、グループで共同栽培・配布する、大麻愛好家や消費者が集まった非営利組織です。
これらのクラブは、大麻に関する法律がより緩やかであるか、非犯罪化されているヨーロッパの一部地域で設立されることがよくあります。
カンナビス・ソーシャル・クラブの歴史:
現在のカンナビス・ソーシャル・クラブの起源は、1920年代にアメリカにさかのぼリます。
当時は、アルコールは違法であったため、大麻は合法的な娯楽やリラックスに使われていました。
また、ヨーロッパでは1990年代から、スペインに多くのカンナビス・クラブが設立されました。
グループの多くは、非政府組織で、2005年にカンナビス・ソーシャル・クラブという表現が使われるようになりました。
その後、イギリス、マルタ、スイスなどの一部の地域でも検討されるようになりました。
2024年4月現在、ドイツのベルリンでは7月からのカンナビス・ソーシャル・クラブが創設可能となり、盛り上がっています。
カンナビス・ソーシャル・クラブの重要なポイント
1.ルール的枠組み
カンナビス・ソーシャル・クラブは、メンバーが大麻を栽培し、供給し、消費することが法的に認められた組織です。
これらの法的枠組みは国によって異なり、特定の規制や制限が含まれる場合があります。
カンナビス・ソーシャル・クラブは、透明性、民主主義、非営利性を特徴としています。
これらは協会として機能し、メンバーに対して財務上情報が完全にオープンであるため、メンバーは経費がどのように計算され、資金が使われるかを確認できます。
カンナビス・ソーシャル・クラブは、少なくとも年に1回総会を開催し、そこで年次報告書が議論され、承認されます。
報告書には、過去会計年度の収入と支出の完全な収支が含まれ、ルールに従って管理されています。
2.非営利組織
ほとんどのカンナビス・ソーシャル・クラブは、非営利団体として組織されています。
通常、ボランティアによって運営され、会費や会員からの寄付によって資金が賄われています。
カンナビス・ソーシャル・クラブは、個人の利益を追求するビジネスではありません。
利益はメンバー間で分配されることはなく、違法な市場で活動するマフィアや大麻流通業者とは異なり、大麻規制法に基づいた運営が行われます。
3.会員制
カンナビス・ソーシャル・クラブは会員制で運営され、クラブの目的を支持する個人は、入会して会費を支払うことで会員になることができます。
会員メンバーになると、クラブ内での意思決定に参加したり、大麻の栽培と配布への貢献など、クラブ内で特定の権利と責任を持つことが多いです。
これはたとえば、オランダのコーヒーショップとは異なり、コーヒーショップがすべての成人が利用できる営利ベースで運営されているのに対し、カンナビス・ソーシャル・クラブは、非営利の理由で運営されており、登録メンバーのみが利用できます。
研究によると、カンナビス・ソーシャル・クラブは、公衆衛生と危害軽減の観点からプラスの結果をもたらす可能性があるとされています。
4.集団的な栽培と配布
カンナビス・ソーシャル・クラブの主な機能の1つは、大麻を共同栽培し、メンバーに配布することです。
メンバーは、大麻の植え付け、栽培、収穫などの栽培プロセスに、個人またはグループで参加できます。
5.品質管理と安全性
カンナビス・ソーシャル・クラブは、生産された大麻が特定の基準を満たしていることを確認するために、品質管理と安全対策を重視することがよくあります。
これには、会員が安全で高品質の大麻を確実に受け取れるように、効力、純度、汚染物質の検査が含まれる場合があります。
6.プライバシーと裁量
カンナビス・ソーシャル・クラブは、通常、メンバーの身元と活動を保護するために、プライバシーと裁量を大切にされています。
これには、会員情報を保護し、警察や一般の人々から余計な注目を避けるために、活動を目立たないようにする工夫が含まれています。
7.教育
カンナビス・ソーシャル・クラブの中には、大麻合法化の促進、責任ある大麻使用についての意識の向上、大麻の栽培と消費に関する情報の提供を目的とした擁護と教育活動、レクチャーなどを行うところもあります。
カンナビス・ソーシャル・クラブは、特定の管轄区域内では合法的に運営されているものの、特に大麻の規制が厳しい地域では、法的な異議や反対に直面することも十分にあります。
ユーザー側も、カンナビス・ソーシャル・クラブの合法性と規制、関連法規をよく理解しておく必要があります。
以上がカンナビス・ソーシャル・クラブの重要なポイントをまとめたものになります。
カンナビス・ソーシャル・クラブの理事長に実情を聞いてみた
次に、私たちCBDライブラリーは、現地のリアルな情報をお伝えしたいと思い、2024年6月にドイツはベルリンにて、カンナビス・ソーシャル・クラブ『High ground berlin e.V.』の理事長、オリバー・ワーク・ユルゲンセン氏にインタビューさせていただきました。
大麻に実際に何十年も関わっているプロの方から、現在のカンナビス・ソーシャル・クラブがどういう状況かなど、直接お話を聞いていきます。
▶️ High ground berlin e.V.公式サイト
今では400にもおよぶカンナビス・ソーシャル・クラブ
CBDライブラリー:ドイツのカンナビス・ソーシャル・クラブ設立に大きく貢献しているオリバーさん、現在の状況はどうなのか、情報を教えてください。
ユルゲンセン氏:はじめまして、『High ground berlin e.V.』の理事長をしているオリバー・ワーク・ユルゲンセンです。
▶️ High ground berlin e.V.公式サイト
2024年6月現在、ドイツのカンナビス・ソーシャル・クラブはまさにスタート段階にあります。
ドイツ政府は、大麻を合法化することを決定しましたが、EUの法律や条約では機能しませんでした。
しかし、政府は、個人的使用のために自家栽培を許可し、つまりこれは同時に、ドイツの法律により、共通の関心事や趣味を持つ人たちが集まる団体を設立できるようになりました。
これがカンナビス・ソーシャル・クラブの始まりです。
これは、トマトや編み物、射撃やサッカーのように、大麻を大切にする人たちが集まって交流や社交を楽しむ、普通の人たちの社会活動です。
しかしその後、EUの政治家が手を引こうとする傾向が出てきました。
そこで、私たちは政治的な圧力をかけるため、クラブ数を増やしていくことが重要だと考えました。
私たちがカンナビス・ソーシャル・クラブを設立したとき、ドイツには6つの団体しかありませんでしたが、今では 400を超えるカンナビス・ソーシャル・クラブがあります。
カンナビス・ソーシャル・クラブは、それぞれの団体が民主的な構造を持ち、選ばれた理事会が責任を持って運営し、メンバーに対して透明性を確保しています。
このカンナビス・ソーシャル・クラブは、大麻は重要な要素の1つですが、主な要素ではありません。
大切なのは、「社交や集まり」です。
大麻の消費は、もちろん安全な状況下行われます。
この仕組みには多くの利点があり、他の国でも成功する可能性があると考えています。
現在、EUはドイツに注目しています。
私たちは、カンナビス・ソーシャル・クラブを成功させる責任があります。
大麻を使用する人々には多くの偏見と誤解があり、それを解消し、社会に受け入れられるようにするために、私たちはこの道を進まなければなりません。
自分たちで組織化し、最善の方法で運営されるカンナビス・ソーシャル・クラブという仕組みは、とても魅力的だと感じています。
政治家たちは、カンナビス・ソーシャル・クラブの数を最小限に抑えたい
CBDライブラリー:ありがとうございます。
カンナビス・ソーシャル・クラブの門が開かれたのは2024年4月ですが、実際には簡単にクラブ開設できないということを聞きました。どうなのでしょうか?
ユルゲンセン氏:政治家たちは、まだカンナビス・ソーシャル・クラブの数を最小限に抑えたいと思っているようです。
その背景には、ビジネスによるリスクもあるからです。
だから今、カンナビス関連のビジネスが参加しにくい法律がつくられています。
同時に、小さなクラブが組織化するのが難しくなっている現状があります。
他にも様々なルールがあります。
たとえば複数のカンナビス・ソーシャル・クラブが同じ場所を共有することは許可されていなかったり、大麻の販売も禁止されています。
参加理由は、同じ趣味を持つ人と交流や情報交換できること
CBDライブラリー:カンナビス・ソーシャル・クラブでの大麻の販売は禁止されているなら、どうやって使用するのですか?1日に5g入手できると聞きましたが。
ユルゲンセン氏:カンナビス・ソーシャル・クラブの会員は年間数十€(ユーロ)の会費と共に、事前に必要な量の経費を別の形で提供します。
後日、カンナビス・ソーシャル・クラブにて数gを受け取ることができます。
つまり “購入”というわけではないのです。
1回の訪問で最大25g、1か月で最大50gまで自宅に保管できます。
また、カンナビス・ソーシャル・クラブに所属していても、自宅に3株の植物を所有することはできます。
ただし、50g以上は保管できません。
CBDライブラリー:理解しました。
自分で大麻を栽培もできるなら、カンナビス・ソーシャル・クラブから入手しなくても自分で、栽培すればいいのに、という感じがしますがどうなのでしょうか?
ユルゲンセン氏:それは知識の問題です。
栽培方法を知っている人は多くありません。
また、ライト、テントなどの室内栽培用の道具をそろえることはなかなか難しいことです。
また、カンナビス・ソーシャル・クラブで同じ趣味を持つ人と交流や情報交換をしたりすることが好きな人もたくさんいます。
それがクラブに参加する大きな理由の一つです。
カンナビス・ソーシャル・クラブのオープンは、2024年7月1日から
CBDライブラリー:それでは、カンナビス・ソーシャル・クラブはいつオープンできますか?
ユルゲンセン氏:2024年7月1日からです。
オープン後、法律によれば、私たちは栽培許可を申請することができます。
しかし栽培は、室内栽培でも最低でも3ヶ月はかかります。
室内栽培は非常に管理され、化学者、農学者、セキュリティの専門家が関与します。
問題は、政府側の曖昧な対応で、どこで栽培していいのか、その許可を誰が与えてくれるのかさえ知らされていないことです。
なぜなら、EUの法律、国の法律、そしてドイツは地域による連邦法がすべてが関わっているからです。
それが、時に訴訟や法的手続きを阻止することもあります。
それに対して、たとえばベルリン大麻博物館や私たちのような大麻の運動家が、カンナビス・ソーシャル・クラブの統括を支えています。
CBDライブラリー:ありがとうございます。
ちなみに、旅行者が例えばベルリンのカンナビス・ソーシャル・クラブに参加することはできるのでしょうか?
ユルゲンセン氏:いいえ、少なくとも 6か月間ドイツに居住居住している必要があり、ベルリンに住居があることが条件です。
その上で、身分証明書を提示して登録する必要があります。
審査後、会員になってから、大麻を入手できるまでにさらに 3か月かかります。
また、複数のクラブに会員になることはできません。
その他様々な手続きや認証など、大変なことが多いのですが、私たちはあらゆることを推し進めなければならないことはわかっています。
私たちは自由であり、大麻は皆のものであるという信念で、行動しています。
CBDライブラリー:素晴らしいインタビューをありがとうございました。
今後のカンナビス・ソーシャル・クラブの発展と大麻の振興を楽しみにしています。
スペインのカンナビス・ソーシャル・クラブに潜入取材してみた
私たちは今回、ヨーロッパでも最も歴史のあるカンナビス・ソーシャル・クラブの一つ、スペイン・バルセロナにあるカンナビス・ソーシャル・クラブを取材しました。
取材に協力してくれたのは、ガウディの建築で知られるサグラダ・ファミリアのすぐそばに位置する『La Sagrada Maria Club』です。
▶️ La Sagrada Maria Club公式サイト
本来、クラブ内部の写真撮影や状況の公開は、特にオンライン上では慎むべきとされています。
しかし今回は、オーナーの特別な許可を得て、撮影およびインタビューを行うことができました。
日本のメディアでこのようにクラブの様子を公開することが、クラブ側にとってリスクとなってはなりません。
そのため、まずみなさんにお伝えしたいのは――カンナビス・ソーシャル・クラブは観光施設ではないという点をご理解いただきたい、ということです。
クラブの扉を叩いても、オーナーが初対面の来訪者に対して、すぐに歓迎の姿勢を見せることはまずありません。
場合によっては、「どのようなつながりでこの場所に来たのか」といったことを尋ねられることもあります。
その意味でも、クラブの門をくぐる前に、セキュリティチェックが設けられているのは当然といえるでしょう。
そしてもし、みなさんがその門をくぐる機会を得たなら、何よりも敬意を持って、ほかの地元メンバーの方々に迷惑をかけないよう最大限の配慮をしながら、時間を過ごしてください。
写真撮影は厳禁です。
節度を守り、クールに、そして楽しく過ごす――それがこの空間を共有するための最低限のマナーです。
それでは、いよいよクラブの内部へと入っていきましょう。
まず最初のスペース(いわば“第一の間”)では、身分証明書としてIDまたはパスポートを提示し、会費を支払って入会手続きを行います。
この際、スマートフォンを用いた二段階認証などのプロセスもありました。
すべての手続きを終えると、正式なメンバーとして登録され、会員カードが発行されます。
カンナビス・ソーシャル・クラブは、それぞれのクラブごとに個性があり、規定、費用、そして雰囲気も大きく異なります。
今回私たちが訪れた『La Sagrada Maria Club』は、まるで友人の経営するバーに立ち寄ったかのような、温かくカジュアルな空気に包まれていました。
館内では陽気なDJが音楽を流し、訪問時には若者から年配の方まで、10人ほどのメンバーたちが思い思いにくつろぎ、にぎわいを見せていました。
もちろん、すでにクラブ内にいたメンバーたちは、アジア人で初対面の私たちに自然と視線を向けてきました。
だからこそ、私は自分から全員に丁寧に挨拶をすることにしました。
次に、クラブ内にいるバッズテンダー(カンナビスの提供を担当するスタッフ)が、「今日はどんな気分?」「どんなものを探してる?」といった具合に、希望を丁寧に尋ねてくれます。
提供されているメニューには、CBD製品からタバコ入りのジョイント、そして高THC含有のフラワー(いわゆる“バッズ”)まで、20種類以上の選択肢がそろっていました。
ちょうど私たちの訪問時、バルセロナではカンナビス関連の国際イベント『スパンナビス(Spannabis)』が開催されていました。
クラブのバドテンダーによると、そのイベント内で行われたカンナビスカップで優勝した品種が入荷しているとのこと。
せっかくの機会ということもあり、私たちは迷わずその品種を注文しました。
クラブの室内には、公的な認可証明書やクラブ内のルールが掲示されており、透明性と自律的な運営方針が感じられます。
中では、メンバーたちが思い思いに会話を楽しんだり、ゲームに興じたりと、穏やかでフレンドリーな空気が流れていました。
女性メンバーやペット連れの方もおり、決して“怖い”といったイメージとは無縁の場所です。
大麻に関わる人であれば、誰しも一度は「大麻について語りたい」と思うはず。
カンナビス・ソーシャル・クラブは、まさにそれが叶う“社交の聖地”です。
ぜひ、現地のメンバーとの交流を通じて、その空気を肌で感じてみてください。
今回ご協力いただいた『La Sagrada Maria Club』のファウンダーにも、たくさんのお話をうかがうことができました。
2013年にカンナビス・ソーシャル・クラブを立ち上げてから現在に至るまでの経緯や、クラブ運営に込めた想いなど、貴重なエピソードを丁寧に語ってくださいました。
非常に穏やかで親しみやすい方で、私たちの質問にもひとつひとつ誠実に答えてくださったことに、心から感謝しています。
まとめ
今回は、「欧州で広がるカンナビス・ソーシャル・クラブとは何か?」というテーマのもと、その概要や現場のリアルな姿をご紹介してきました。
日本では今なお、「大麻」や「カンナビス・ソーシャル・クラブ」「フェスティバル」といった言葉に対して、“危ない”“中毒性がある”“ヤバい人たちの集まり”といったネガティブな先入観が根強く残っています。
しかし、私たちが現地で見た実態は、そうしたイメージとは大きく異なるものでした。
当メディアは、大麻の吸引や所持を決して推奨しているわけではありません。
けれども、「現実」や「リアルな声」に触れることでしか見えてこないものがあることも、また事実です。
ぜひみなさん自身の目で見て、耳で聞いて、責任ある姿勢で体験してみてください。
文字や映像では伝えきれない、何かがきっとそこにあるはずです。
それでは、また次回のレポートでお会いしましょう。