【神経科学者監修】合成大麻(麻)と合成カンナビノイドは、同じ意味?

(当記事は、アメリカでの法律、研究に基づいて作成されています)

アメリカで大麻の合法化が進むにつれ『K2』や『スパイス』と呼ばれる偽物が続々と登場しました。

では、この合成大麻の実態はどうなっているでしょうか?

合成大麻は、ハーブやスパイスをはじめ、細かくした植物に人工カンナビノイドを噴霧したものです。

摂取すると人体に危険を及ぼす恐れがあります。

CBDの原料、大麻(麻)
▲ 合成大麻は、ハーブやスパイスをはじめ、細かくした植物に人工カンナビノイドを噴霧したものです(写真:ジーナ・コールマン/ウィードマップス)

2018年5月、50人以上のブルックリン在住者が数日間で『K2』を過剰摂取しました。

この事件は、全米に懸念を広げました。

アンドリュー・クオモ州知事は、メンタルヘルスの専門家や、救急病院のスタッフ向けの臨床指導を含む、複数機関による取り組みを発表し、市当局に、同じような行動を促しました。

合成大麻の危険性は、2018年7月にもアメリカの他の地域を襲いました。

ワシントンD.C.当局は、合成大麻の不良品によって4人が死にいたり、100人以上が不調を起こしたと断言しました。

このように、人体へ悪影響を及ぼす”合成大麻”と呼ばれる物質を規制する動きがある一方で、多くの人は他の合成カンナビノイドとの違いには興味がないようです。

スパイス』『K2』『ブラックマンバ』などの合成カンナビノイドは、一般的に合成大麻と呼ばれています。

この名称は、科学的には正確ではありません。

そのため、合成カンナビノイドと聞くと、被害妄想や幻覚を引き起こし、場合によっては過剰摂取につながる危険で偽物の大麻を想像してしまう人が多いのです。

このイメージが、混乱を招いています。

合成カンナビノイドの真実は、全土に渡る合成大麻の不祥事の下に埋もれています。

合成大麻と合成カンナビノイドの違い

合成大麻は、科学的には存在しません。

合成カンナビノイドは、ドライハーブや植物に噴霧されます。

天然の娯楽用大麻の代替品として販売されています。

合成大麻に含まれる化学物質は、天然の大麻と同様にカンナビノイド受容体に結合します。

結合によって『K2』『スパイス』に含まれる化学物質の働きが強化されます。

その結果、非常に強い副作用をもたらします。

2018年6月7日『フロント・パブリック・ヘルス(Front Public Health)』誌に掲載された研究では、カンナビノイド薬と合成カンナビノイド薬の効果を比較しました。

合成カンナビノイドの方が、被験者に悪影響を及ぼすことが明らかになりました。

研究者は、大麻に含まれる天然のTHC(テトラヒドロカンナビノール)が、脳のカンナビノイド受容体への部分的な作用薬なのに対し、合成カンナビノイドは全体作用薬であり、受容体に大きな影響があると指摘しています。

また、合成カンナビノイドは、大麻などの向精神作用のある物質と比較して、重篤な精神疾患の発症リスクが高いことも明らかになりました。

CBDの原料、大麻(麻)と脳
▲ 大麻に含まれる天然のTHCが脳のカンナビノイド受容体の部分的な作用薬なのに対し、合成カンナビノイドは全体作用薬であり、受容体に大きな影響があると指摘しています(写真:ジーナ・コールマン/ウィードマップス)

「合成カンナビノイド薬の使用は、興奮・過敏性・錯乱・幻覚・妄想・精神症・死亡などと関連しています」と結論づけています。

しかし「いわゆる合成大麻」に使用された合成化合物は、研究室で製造した合成カンナビノイド商品に見られる有害な副作用がないことに注意しなければなりません。

神経科学者で『ウィードマップス(Weedmaps)』の科学アドバイザーであるアディ・レイ博士は、合成カンナビノイドの3つのカテゴリーについて説明します。

・研究用カンナビノイド:通常、研究目的でのみ製造されます。一般消費者は入手できません。
・医薬品カンナビノイド:製薬会社が製造する大麻に似た作用を持つ分子です。ドロナビノールなどの合成カンナビノイド薬が、FDA(米国食品医薬品局)で承認されています。
・違法カンナビノイド:『スパイス』『K2』などに含まれています。これらはアメリカ国外で、管理の目が届かない業者が製造しています。非常に危険なことが証明されています。

「違法な合成カンナビノイドはすべて危険です」と、レイ博士は説明します。

「一見、問題なさそうに店頭に並んでいても、商品の中身には未知のリスクが潜んでいます。有効性について研究されたものはありません。その害については、多くの証拠があります」

一方で、研究者たちは、有益性に目を向けて合成カンナビノイドの実験を行っています。

CBDの健康効果が一般的になるにつれ、他の100種類以上のカンナビノイドへの関心も高まっています。

2020年11月、カナダのバイオテック企業『ウィロー・バイオサイエンス(Willow Biosciences)』社は、カンナビノイドの内、CBG(カンナビゲロール)を研究室で商用に大量生産したと発表しました。

同社の試運転では500L(130ガロン)が生産されました。

国際的な企業(化粧品会社、食品・飲料会社、栄養補助食品会社など)に、すぐに完売しました。

さらに、17社のメーカーがCBGサンプルを首を長くして待っています。

ウィロー・バイオサイエンス』社は、CBGV(カンナビゲロバリン)・CBDV(カンナビジバリン)・THCV(テトラヒドロカンナビバリン)など、他の合成カンナビノイドの生産も強化しています。

大麻関連のデータ会社の『ヘッドセット(Headset)』社は、CBD・THC以外のカンナビノイドを配合したティンクチャ―の売上が、第2四半期~第3四半期にかけて10%以上増加したと報告しています。

アメリカの大手たばこ会社も注目しています。

アルトリア(Altria Group(Marlboro、Newport)』社は、カナダの大麻企業が酵母からカンナビノイドを生産する取り決めを発表した後『クロノス(Cronos)』社に投資しました。

合成カンナビノイドは、食品・飲料・化粧品などの企業には魅力的な物質です。

天然のものとは異なり、安定した品質で大量生産できます。

種から育てる手間や時間が必要なく、カンナビノイドのプロファイルが異なる植物から化合物を抽出しなくてもいいのです。

人工の商品は、グローバルなサプライチェーンの需要である”安定した効能”を提供します。

レイ博士は、大麻全草の方が、相乗的に症状緩和に働くと考えます。

合成カンナビノイドにも、効果があることを認めています。

「ドロナビノールのようなFDA承認のカンナビノイドについて言えば、大麻の方がはるかに効果が高いでしょう」とレイ博士は述べました。

「ドロナビノールは経口摂取のため、体感までに時間がかかります。大麻の蒸気は即効性があります」

結論

2018年~2019年『K2』『スパイス』『ブラックマンバ』など、”合成大麻、偽大麻”と誤って呼ばれていたものを使用し、多くの人が被害を受けました。

消費者の中には、薬物検査で陽性になるのを避けたかった人もいます。

単に、闇市場のマリファナ(嗜好用大麻)に代わる合法で安価なものを求める人もいました。

理由は何であれ、相当数の負傷者や死亡者が出たため需要が減りました。

違法で危険な合成カンナビノイドは、まだ存在しています。

今日では、合法のバイオテクノロジー企業が研究室でカンナビノイドをつくり、大麻農家と競合することに焦点が当たっています。

合成カンナビノイドと天然カンナビノイド、いずれが勝利を収めるか?は「消費者が大麻に何を求めるか?」にかかっています。

<参考文献>
ウィードマップス(weedmaps)』アディ・レイ博士によるレビュー(2020年12月9日)
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