ヘンプ(産業用大麻)とマリファナ(嗜好用大麻)の違い

(当記事は、アメリカでの法律、研究に基づいて作成されています)

「ヘンプ(産業用大麻)」と「マリファナ(嗜好用大麻)」は、生物学的には同じ大麻(麻)に分類されます。

しかし、両者には重要な違いがあります。

ここでは、ヘンプの生体構造・歴史・使用方法・合法性などを解説します。

ヘンプとマリファナの違いだけでなく、ヘンプが汎用性の高い商品である理由を明らかにします。

ヘンプ(産業用大麻)とは?

ヘンプは、大麻草(カンナビス・サティバ・L)の一種で、雌雄異株の植物です。

1万年以上前から、さまざまな用途に使われてきました。

茎からは繊維、種子からはタンパク質、葉や花(バッズ)からはオイルが採れます。

バッズは喫煙もできます。

ヘンプの繊維は、紙・衣類・繊維商品・ロープ・建築資材などに使われます。

CBDの原料、大麻(麻)

▲ ヘンプの繊維は、紙・衣類・繊維商品・ロープ・建築資材などに使われます。(写真:ジーナ・コールマン/ウィードマップス)

茎から種まで、ヘンプ全体が、燃料や工業用原料にもなります。

具体的な用途として、4つのカテゴリーに分類されます。

  • 靭皮繊維
  • 結束繊維
  • 葉やバッズ
  • 種子

ヘンプ(産業用大麻)とマリファナ(嗜好用大麻)の比較。ヘンプにもTHCが含まれてるの?

ヘンプは、豊富な種類のカンナビノイドを含みます。

マリファナに含まれる酩酊作用のあるカンナビノイド「THC(テトラヒドロカンナビノール)」もあります。

しかし、ヘンプが含むTHCの量は、酩酊作用をもたらすほどではありません。

ヘンプは、THCを大量に生産しません。

一方で、酩酊作用のないカンナビノイド「CBD(カンナビジオール)」を高濃度に含むことができます。

現在、ヘンプ由来のCBDは、大麻市場で最も人気のカンナビノイドになりつつあります。

多くの国では、ヘンプとマリファナは、含まれるTHCの量によって識別されています。

アメリカでは「ヘンプ」は、THCを0.3%以上含まないカンナビス・サティバ・Lと定義されています。

EUでは0.2%とされています。

イギリスでは0%ですが、栽培ライセンス(0.2%以下のTHCを含む産業用ヘンプの栽培)を取得している場合を除きます。

CBDの原料、大麻(麻)とライター

▲ アメリカでは「ヘンプ」は、THCを0.3%以上含まないカンナビス・サティバ・Lと定義されています。(写真:ジーナ・コールマン/ウィードマップス)

ヘンプは喫煙(吸引)できますか?

はい、できます。

ただし「ハイ」にはなりません。

ヘンプは、陶酔作用を及ぼすほどのTHCは含まないのです。

CBDは、厳密にいうと精神作用があります。

しかし、陶酔作用のないカンナビノイドです。

多幸感などはもたらしません。

酩酊感などの「ハイ」になるのが目的でなければ、ヘンプを吸引してCBDなどのカンナビノイドを効率的に摂取できます。

今は、バッズやプレロールがオンラインで簡単に購入できるので、気軽に試せます。

ヘンプ由来のCBDグミやCBDオイルが流行っていますが、吸引の場合は、その場で適量を調整できます。

CBDグミやCBDオイルのように体感が出るまで待つ必要がありません。

さらに、生体利用率(バイオアベイラビリティ)のが高まるという利点もあります。

吸引は、食べるタイプ(経口摂取)やティンクチャー(舌下摂取)と比べ、CBDが血流に吸収されるのがはるかに速いのです。

また、煙や蒸気に含まれるCBDを吸い込むことで、より多くのCBDを体内に取り込めます。

食べるタイプのCBDは消化の過程でCBDの効力が低下してしまいます。

よりきれいに燃焼させるには、麻の芯でバッズに火を着けてみましょう。

蜜蝋でコーティングされた生の麻芯は、天然素材でできています。

ゆっくりと燃焼し、ライターやマッチよりも大麻の風味が良いと、多くの消費者から支持されています。

CBDの原料、大麻(麻)をパイプで吸引する女性
▲ よりきれいに燃焼させるには、麻の芯でバッズに火を着けてみましょう(写真:ジーナ・コールマン/ウィードマップス)

ヘンプの品種はどのように選ばれるの?

商品の目的別に、以下の要素をもとに品種を選びます。

  • 茎の品質
  • カンナビノイドの含有量
  • 病気への耐性
  • 収穫までの期間
  • ヘンプオイルの含有量
  • 1エーカー(約1,200坪)あたりの種子生産量

特にCBDの生産量は、近年重要なポイントとなっています。

また、CBD市場の拡大に伴い、ユニークなテルペン(植物の香り成分)のプロファイルに基づいて、栽培品種が選ばれる傾向にあります。

大麻(麻)由来の健康オイル、CBDオイル
▲ ヘンプ由来のCBDオイルは、近年人気を集めています(写真:ジーナ・コールマン/ウィードマップス)

ヘンプ(産業用大麻)は、何に使われますか?

CBDオイルは、大麻の葉や花から抽出されます。

CBDオイルを健康補助食品として利用する人が増えており、CBDに特化した栽培方法の人気が高まっています。

ヘンプの繊維は、主に繊維製品・紙・建築資材、その他の工業商品に使用されます。

結束繊維(茎の内部にある短い木質繊維)も原材料になります。

寝具材・吸収材・パーティクルボード・天井板・堆肥などの工業商品に使用されます。

茎の外側を構成する靭皮繊維は、一次繊維(ラインファイバー)・二次繊維・麻くずの3つのカテゴリーに分けられます。

これらは、細胞の強度と細胞壁の厚さによって分類され、繊維の強度・耐久性・用途を決定します。

ヘンプの食品としての利用は?

種子(ヘンプシード)には、タンパク質・食物繊維・ビタミン・ミネラルなどが豊富に含まれています。

また、オメガ6系とオメガ3系の脂肪酸の比率のバランスが良く、健康的に摂取できます。

2008年の研究では、ヘンプのタンパク質は、食品に使用されている一般的な分離大豆タンパク質(SPI)よりも消化しやすいことが分かっています。

ヘンプシードは、そのまま食品として利用できます。

ヘンプシードから採れるオイルも活用できます。

種子を挽いて粉にしたり、水と混ぜてヘンプシードミルクもつくれます。

ヘンプは、どのように加工されますか?

加工業者は、多種多様な加工技術を麻の種子や茎に用います。

製品の目的に応じて、使用する技術は異なります。

ヘンプシード

種子は、そのまま食べられます。

圧搾や粉砕によって精製され、オイルや粉にもなります。

種子は、口当たりをよくするために殻を剥いたりします。

残った殻は食物繊維が豊富なので、粉として活用できます。

ヘンプシード
▲ 種子はそのまま食べられるほか、圧搾や粉砕によって精製され、ヘンプシードオイルや粉になります(写真:ジーナ・コールマン/ウィードマップス)

ヘンプの茎

ヘンプの茎は「剝皮」という多段階法で、長い繊維を取り出します。

これにはフィールドレッティングと呼ばれる工程が含まれます。

成長した苗木を刈取り、4〜6週間畑に放置するのです。

この間に、植物の表面にいるバクテリアが茎の外側の層を分解します。

腐った茎は乾燥させます。

水によるレッティングもあります。

収穫後すぐに乾燥させた茎を、数日間水につけておきます。

水が茎の外側の層を柔らかくし、バクテリアの繁殖を促します。

工程を加速させるのです。

化学的なレッティングもあります。

酸や塩基、特殊な酵素を使って丈夫な靭皮繊維を支えている化合物を分解します。

ヘンプ(産業用大麻)の栽培方法。マリファナ(嗜好用大麻)との違いは?

ヘンプとマリファナのその他の主な違いは、栽培と収穫にあります。

ヘンプの雄株は、雌株に比べて開花が早く、繊維の生産量はそれほど多くありません。

マリファナの栽培では、雄を間引く傾向があります。

ヘンプの畑では、雌の中に雄も散在させて栽培します。

CBDの原料、大麻(麻)
▲ ヘンプの雄株は、雌株に比べて開花が早く、繊維の生産量はそれほど多くありません(写真:ジーナ・コールマン/ウィードマップス)

ヘンプの雄株は花粉を放ち、雌株は種をつくります。

種は次の収穫用に植えたり、食用として販売します。

マリファナ畑では、シンセミラ(種なし)の花を最大限に咲かせるために、雄株を間引きます。

マリファナ栽培では、カビやバクテリアのリスクを減らすために十分な間隔を取ります。

一方、ヘンプは、より密集して植えられます。

マリファナの栽培では、4平方フィートあたり1本の大麻を植えます。

オイル用のヘンプでは、4平方フィートあたり40〜60本です。

繊維用は、さらに高密度に植えます。

4平方フィートあたり100〜120本の割合です。

マリファナは、温室や屋内で栽培されます。

一方で、ヘンプはほとんどが屋外で栽培されます。

ヘンプは、マリファナと同じように、捕食者や病気、害虫の影響を受けやすいです。

そのため栽培者は「輪作」といって、同じ場所に交互に作物を植え、有害な生物を避け、土壌に養分を戻すようにしています。

輪作の順番や作物の種類は、農場の立地条件によって異なります。

また、ヘンプが主な農産物ではない農場でも、輪作として使用されています。

アメリカ合衆国で、ヘンプ(産業用大麻)の栽培は合法ですか?

連邦政府の動き

2014年農業法案(通称:2014年農業法)には7606条があります。

大学や州の農務省が、ヘンプを栽培し研究に使用する場合に限り、その栽培を許可しています。

2014年農業法では、州の省庁や大学もその州に登録し、州の法律や規則に従った上で、ヘンプ栽培の承認を得なければなりません。

2018年農業改善法(通称:2018年農業法案)の一環として、ヘンプ(THCが0.3%以下)を、スケジュールI(乱用の可能性が高く薬効がないとされる、連邦政府の最も制限の厳しい規制物質の分類)を見直しました(「the Hemp Farming Act(ヘンプ農業法)」)。

このヘンプ合法化により「合法的な農産物」としての栽培と流通が実現しました。

また、ヘンプ栽培者の制限も無くなりました。

さらにこの法律では、ヘンプ農家に水・作物保険・連邦農業助成金の権利を与え、国内銀行への合法的なアクセスも可能になりました。

また、ヘンプは州境を越えた輸送ができます。

州の法律

2018年の「Hemp Farming Act」に先立ち、41州がヘンプ関連の法律をつくりました。

そのうち39州では、栽培プログラムを合法化しました。

マリファナとの違いを明確に定義し、ライセンス要件を定めた生産規制です。

今回の「Hemp Farming Act」では、各州の農務省が州知事および最高法執行官との協議の上、規制プログラムの策定が義務付けられています。

策定したプログラムは、米国農務長官に提出し承認を受ける必要があります。

法案第297B条によると、州のヘンプ規制プログラムには、下記が含まれている必要があります。

  • すべての栽培地の情報を保持するシステム
  • ヘンプのTHC濃度を検査する手順
  • THC含有量規制に違反した製品を廃棄する手順

大麻の世界史

ヘンプは何千年も前から世界規模で栽培されてきました。

ヘンプの栽培を示す最古の記録は、チェコで発見された紀元前2万6900年のロープです。

紀元前1万年頃の中国では、衣服やロープ、紙などに活用していたことが知られています。

また、紀元前5,000年頃に中国に住んでいたヤンシャオ(仰韶)族は、ヘンプを織ったり、陶器に押し込んで装飾に使っていました。

日本でも紀元前5,000年~300年頃まで栽培され、繊維や紙の原料として使われていました。

大麻は、グレコ・ローマ文化圏において、繊維・陶酔・薬の原料として重要でした。

ポンペイ遺跡からは大麻の種子が発見されました。

ギリシャの修辞学者アテネウスは、170年~230年の間にロープ作りにヘンプが使われていたと記しています。

また、紀元前1世紀には、ローマの博物学者のプリニウスが、大麻の根を煎じて関節のこわばりや痛風の治療に使用したと記録しています。

ヘンプがいつ、どのようにして新大陸に伝わったのかについては、いまだに議論が尽きません。

長い間、コロンブスがアメリカ大陸に持ち込んだと考えられてきました。

しかし、コロンブスが到着する以前のアメリカ先住民の文明からもヘンプが発見されています。

1896年、ウィリアム・ヘンリー・ホームズが発表した著書『Prehistoric Textile Art of Eastern United States』には、五大湖やミシシッピ・バレーのネイティブ・アメリカンの部族からヘンプが発見されたと記されている。

バージニア州では、コロンブス以前の先住民族の大麻製品も発見されています。

また、バイキングはロープや帆の材料としてヘンプを活用していました。

新大陸を植民地化しようとした際に種子を持ち込んだ可能性もあります。

1600年代初頭、ジェームスタウンの入植者たちは、ロープや紙などの繊維製品のためにヘンプを植民地時代のアメリカに導入しました。

自分たちで収穫しない者には罰金を課しました。

アメリカ大統領のジョージ・ワシントンやトーマス・ジェファーソンも大麻を栽培していました。

1937年にマリファナ税法(the Marihuana Tax Act)が制定され、アメリカのヘンプ産業が事実上消滅するまでは、ヘンプは重要な作物でした。

第二次世界大戦中には、軍服やキャンバス、ロープなどの軍需品の材料として大活躍しました・

アメリカでも大麻は復活を遂げました。

1942年、農務省は短編ドキュメンタリー『Hemp for Victory』を発表し、戦争に役立つ作物としてヘンプが宣伝されました。

しかし、第二次世界大戦後のヘンプの復活は長続きしませんでした。

1970年に制定された規制物質法により、2014年の農業法案が可決されるまで工業生産は休眠状態にありました。

現在、ヘンプはCBD商品に欠かせない資源として急速に普及しています。

よくあるご質問

ヘンプは麻薬ですか?

ヘンプ自体は植物です。

しかし、医薬品とみなされることもあるCBDは、ヘンプからも抽出されます。

FDA(米国食品医薬品局)は、CBDを使った医薬品をてんかんの治療薬として承認しています。

また、世界中の人々がCBD商品を様々な病気の治療に使用しています。

がんやニキビなど、あらゆる症状へのCBDの有効性については、更なる研究が必要です。

オーストラリアで、ヘンプは合法ですか?

オーストラリアでは、ヘンプの一部は合法です。詳細は政府のウェブサイトをご覧ください。

NZ(ニュージーランド)で、ヘンプは合法ですか?

ニュージーランドでは、認可プログラムがあります。

THC含有量が0.35%未満の品種の栽培を対象としています。

ヘンプの医療用途は?

ヘンプ由来のCBDにはさまざまな用途があります。

公認されているものには、FDAが承認した小児てんかんの治療薬などがあります。

今後、より多くの研究が必要です。

科学者たちは、以下の症状へのCBDの治療・緩和の有効性に注目しています。

  • パーキンソン病
  • アルツハイマー病
  • 炎症
  • 慢性疼痛や神経因性疼痛などの痛み
  • 心的外傷後ストレス障害(PTSD)
  • うつ病
  • 睡眠障害
  • 双極性障害
  • 社会不安障害

 参考文献

Wang, Xian-Sheng, et al. 「Characterization, Amino Acid Composition and in Vitro Digestibility of Hemp (Cannabis Sativa L.) Proteins.(産業用大麻(カンナビス・サティバ・L)タンパク質の特性、アミノ酸組成および試験管内消化率)」Food Chemistry, vol. 107, no. 1, 1 Mar. 2008, pp.11-18., doi:10.1016/j.foodchem.2007.06.064.
Callaway, J. C. 「Hempseed as a Nutritional Resource: An Overview(栄養資源としてのヘンプシード:概要)」 Euphytica, vol. 140, no. 1-2, 2004, pp.65-72., doi:10.1007/s10681-004-4811-6.
Ryz, Natasha R., et al. 「Cannabis Roots: A Traditional Therapy with Future Potential for Treating Inflammation and Pain(大麻の起源:炎症・痛みの治療が見込める伝統的療法)」 Cannabis and Cannabinoid Research, vol.2, no.1, Jan.2017, pp.210-216., doi:10.1089/can.2017.0028.
Holmes, William Henry. Prehistoric Textile Art of Eastern United States.( アメリカ東部の先史時代のテキスタイル・アート)G.P.O., 1896.
<参考文献>
ウィードマップス(weedmaps)』レスリー・ニックスによるレビュー(2021年10月3日)
※当サイトでご紹介する商品は、医薬品ではありません。また、病気の診断、治療、予防を目的としたものでもありません。
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